はにかみ屋のあの子をロックオン
いつも行く社食の調理場には、おばちゃん達にまぎれて一人だけ若い子が居る。
眼鏡をかけて、ポニーテールなのに下のほうにするのがお決まりのようだ。
接客は苦手そうに見える。
でもたまにハニカム顔が可愛い感じで、なんとなく目についてからもう2年くらい経った気がする。
2年も毎日見ていると、突然いなかった日にはこちらが落ち着かないくらいだ。
結婚して6年目の妻からは「お弁当にしたら?」と言われているが、この生活リズムを崩せなくなった俺は「社食で毎日打ち合わせの延長みたいな話をしながら食べてるんだよ!」と、仕事だから!みたいな偉そうな事を言って断っているくらいだ。
今日のお昼時は外が雨だからか社食がすごい人数だった。
列、列、長蛇の列だ。
もう間に合わないかもしれないと思い、諦めて一度部署に戻った。
遅いお昼にはなったけど、2時頃に顔を出したら誰もいない食堂で片付けをしながら「眼鏡のあの子」が泣いていた。
正直ドキっとした。
気付いたら近づきながら左手の指輪を外し、頭を撫でていた。
あの子は顔をあげ、淋しそうにハニカミながら眼鏡を取って涙を拭いた。
初めて見た眼鏡じゃないあの子はとてもキレイだと思った。
俺の身体中に電気が走り、何も言わずに思い切り抱き締めてしまっていたのだ。
彼女はすぐに私に心を開いてくれた。
多分、強引に引っ張られるのは好きみたいだ。
会社から少し離れた場所で会い、車の中では手もつないだしキスも強引にした。
彼女はいつもニッコリ笑っていた。