チョコレート

そういや今年ももうすぐバレンタイン。
私は馬鹿だった。
こんな軽佻浮薄なイベントって何それ?って嘲笑って生きてきた。


でも、お兄ちゃんがもらってきたチョコにはむかむかとむかつくから、急いで帰宅して本人が見る前にびりびりに包装紙を破いて誰からか分からないようにして、全部胃の中に収めてやった。
凝った感じの包装紙にパリですかって感じのリボンが巻き付けられたフンパツしただろうもの。
それに手作り感溢れるいじらしくってハートフルなもの。

何の区別なく容赦なく処分した自分って、残忍だったかも。
送り主のタグとか封筒とかも一切合切全部処分してやったもんね。
しかも後でこっそりと見ないようにチェックしないように、自転車に乗って遠くの何処かに捨てに行くという周到さ。
どうよ!してやったりって感じ。

それで帰宅した兄にひとこと。
「ごめん、全部食べちゃった」。
兄は何故か恥ずかしそうに、いいよ別にと言い、自室にいったん入る。

部屋から出てきた兄を、私は穴のあくほど見つめる。
誰からなのか、心当たりがあるんだ。
そいで翌日にはごめん、妹が食べちゃってとかって話すのだろう。

何個かあったみたいだけど、どれだったのかな?って嫌味なくモテっぷりを披露もできる。
彼女は嫉妬の炎をめらめらと燃やし、妹からそれほど慕われている兄にいっそう想いを寄せる。
ふたりはさらに和み、近づくのだ。

しまった、やっちまった!。
ピエロか!バカ私!と、湧き起るヒステリーをなんとか肚に収める。
で、食卓に座った兄に自分のチョコを「どうぞ」としおらしく差し出す。

明日がどうあれ、今この瞬間、兄が食べる頬張るチョコはこれだけ。
「わたしだけ」。
昔は凄まじいまでのブラコンだったのに、いつからこうなってしまったのか。

だからあなたも食べないで。
絶対絶対絶対に食べないで。
義理チョコだって食べないで。
本命だろうが義理だろうが、綺麗に包装してようがびりびりに破いて遠くにぽいって捨て去るから。

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